校長先生の小窓を開けると

第11回 卒業生に聞いてみました オホーツクとっかりセンターアザラシランド 中澤さん

オホーツクとっかりセンターアザラシランド(オホーツクガリンコタワー株式会社)
中澤 蒼さん(24期生)
(24期生は、平成24年4月入学、平成26年3月卒業)

オホーツクとっかりセンターアザラシランドは、北海道紋別市にある市営のアザラシ保護施設です。「とっかり」とはアザラシを意味するアイヌ語「トゥカラ」に由来する北海道方言。とっかりセンターでは、1987(昭和62)年の4頭から始まり、現在は2種類(ゴマフアザラシ、ワモンアザラシ)、20頭を超えるアザラシを飼育しています。
また、同センターは、アザラシを観察・観賞・体験してもらう展示施設の機能と、怪我をしたりや網にからまったりして保護されたアザラシを治療し、自然の海へ返す保護センターの機能を担っています。指定管理者はオホーツクガリンコタワー株式会社です。


北 村
こんにちは、お元気でしたか?

中 澤
お久しぶりです。遠くまでいらしていただいき、ありがとうございます。

北 村
まず、とっかりセンターの概要と中澤さんのご担当を教えてください。

中 澤
オホーツクとっかりセンターには、アザラシシーパラダイス(自然環境一体型展示施設)とアザラシランド(アザラシ保護飼育施設)との2施設があり、私はアザラシランドの担当です。

(写真3)とっかりセンターの場所と外観

北 村
中澤さんは北海道出身ですから、真冬の寒さは大丈夫なのでしょうか?

中 澤
いえ、私は内陸にある士別市出身なので、海風の冷たさにはこたえます。

北 村
では後輩のために、いろいろとお聞かせください。東京動物専門学校を選ばれたのはどうしてですか?

中 澤
幼い頃から飼育員を目指していましたが、どんな分野に進むかまでは決めていませんでした。東京動物専門学校なら、数多くの動物たちと関わり、さまざまな分野のことを学びながら自分の進みたい道を探せると思い、受験を決めました。

北 村
実際に入学してみていかがでしたか?

中 澤
入学後は、水族館に就職することを目指すようになりました。ショーに憧れてからは、人前で話すことに力を入れ、学校祭では、アシカショーやヤギ・羊のふれあいを担当しました。実習では、カリフォルニアアシカやゴマフアザラシの馴致調教やショーもやらせていただき、自信にもつながりました。

北 村
学校の授業で学んだことは、今の仕事に役だっていますか?

中 澤
動物たちと関わりながら行う実習や、人前で話す練習など、実際の現場に限りなく近いことを実践し学んだことは、職場でも役に立っています。また、普段の学校生活でご指導いただいたことは、社会人のマナーとして大切なことだったと実感しています。

北 村
中澤さんは、2年生の施設研修先も、とっかりセンターでしたね。

中 澤
アザラシの保護施設という面に関心を持ち、希望しました。研修では、保護施設としての役割のほかに、観光施設としての役割についても学び、その二面性に魅力を感じ、ここで働きたいと思うようになりました。

北 村
施設研修が、就職のきっかけになったのですね。

中 澤
研修の時から「ここで働きたいです」と職員の方々にお伝えしていました。数ヶ月後、そのことを覚えていてくださった担当者の方が「一緒に働きませんか?」とお声をかけてくださり、校長先生をはじめ学校職員の方々のお力添えもあり、研修から1年後に内定をいただくことができました。

北 村
不断の努力が、就職に結びついたのですね。ところで、東京農業大学オホーツク校の学生さんも、とっかりセンターで実習すると聞いています。

中 澤
毎年、1年生が施設見学にいらっしゃいます。また、2週間ほどの実習に来る学生さんもいます。

北 村
農大生と東京動物専門学校生との違いを感じることはありますか?

中 澤
個人差はあると思いますが、専門的知識に関しては農大生のほうが豊富、現場での実践力に関しては東京動物専門学校のほうが慣れているように感じます。

北 村
そのような傾向があることは、時折耳にします。では、今のお仕事についてお聞かせください。

中 澤
現在、とっかりセンターには、アザラシランドに25頭、アザラシシーパラダイスに2頭、計27頭のアザラシがいます。センターでは、アザラシたちの保護飼育のほかに、給餌解説やイベントなどのお客様対応も行っています。保護したアザラシたちが元気になっていく姿を見るのはとても喜ばしいことです。また、今年は、とっかりセンターで初めてワモンアザラシの赤ちゃんも産まれました。成長していく姿は保護個体とは別の嬉しさを感じます。元気なアザラシたちを多くのお客様に見ていただけるよう日々努力しています。

(写真4)初めて生まれたワモンアザラシのこども

北 村
ここ数年、保護個体は減少しているようですが、すべて放流しているのですか?

中 澤
毎年4月から5月に、アザラシの新生仔が保護されます。頭数は一定ではありませんが、多い年には10頭ほど保護されることもありました。しかし、保護頭数はだんだんと減っており、流氷の減少がアザラシたちにも影響しているのかもしれません。

北 村
温暖化の影響もあるのかもしれませんね。では最後に、後輩へのアドバイスをいただけますか?

中 澤
学校のルールを通して、社会人としてのマナーを身につけておくといいと思います。学生生活で当たり前のようにしてきた行動が、社会にでたとき思わぬ良い評価につながることもあります。そうした評価から得られる信頼はとても大切です。また、人前で話す練習は積極的に行ってみてください。実際の現場では、お客様との会話やイベントでの解説など、人前で話なければいけない場面がたくさんあります。学生のうちに慣れておけば、現場に出てからも役に立つと思います。最後に、わからないことは必ずその場で解決するようにしてください。質問することは、緊張したり、恥ずかしいと感じたりするかもしれませんが、わからないままにしておくと、あとになってもっと苦労します。勇気をもって質問しましょう。皆さん、頑張ってください。

北 村
ありがとうございます。中澤さんは、わが校の卒業生の中で、最北の職場で働いていることになりますね。真冬は猛烈な寒さ、その上、海獣を担当していらっしゃるのですから、体には十分気をつけてください、今年、施設研修先にとっかりセンターを希望している2年生がいますので、よろしくお願いいたします。

※追記1
冨里飼育場の人気者、ゴマフアザラシのモンとベツは、20数年前に、とっかりセンターから冨里にやってきた。実は、一昨年、とっかりセンターに相談のうえ、紋別市長あてに「20数年前にトッカリセンターからお預かりしたアザラシのモンとベツは、今でも元気です。ただ、高齢になり、特にベツは目が白濁してきています。もし放流困難個体がいましたら、私どもで教育用に飼育したいので、よろしくお願いします」との依頼を文書で提出しました。しかし、保護個体が減少してきているとのことで、実現はかなり難しいようです。

(写真5)モンとベツ

※追記2
とっかりセンター(オホーツクガリンコタワー株式会社)は、2018年3月、公益財団法人日本動物愛護協会主催の第10回日本動物大賞(社会貢献部門)を受賞しました。30年間に187頭のアザラシらを保護、元気になった個体を放流し、その実態を80本以上の論文や報告書にまとめ、発表した功績が高く評価されました。

第11回 おわり