第7回 【前編】東京動物専門学校卒業生の学校生活と最新就職状況
「卒業すると、どんなところに就職できるのですか?」「こんな職場で働きたいと思っているのですが、希望はかなえられますか?」これらは、本校の受験を考えている高校生や保護者の皆さまから良く尋ねられる質問です。そこで、今回の校長の部屋は特別編、最新の就職状況や入学から卒業までの様子を、2回にわたってお知らせしようと思います。
実は、4月5日第29期生153名を迎えての入学式がありました。その学校長式辞の中で新入生や保護者の皆さんに、3月に卒業した27期生144名の就職状況について動物園名や水族館名などを具体的にあげて説明しました。
そして「諸君も2年後にはこれらの先輩の後に続いていけるよう頑張ろう!」と励ましたばかりなのです。
その内容の詳細をお話しします。
就職状況
27期生(2017.03卒/2015.04入学)144名の内、就職希望者143名の分野別就職状況は次の通りです。(1)就職率について
HP上やマスコミでは常に98%以上の就職率となっています。しかし実際は、ほぼ毎年100%状態です。というのは、4月に入っても企業から「今年の卒業生で誰かいませんか」との求人が常態化しているからです。
(2)正社員と非正規職員について
今年の就職決定者143名中、正規職員は48名で33.6%です。最近は改善されてきているようですが、一昨年は労働者の非正規職員が全体の4割を超えたと、マスコミなどで大きな話題になりました。しかし、新人は数字的には1/3しか正規職員になれませんが、もちろん勤務を継続し正規職員に登用される場合も少なくありません。
(3)本人希望と求人とのギャップについて
就職希望企業からの求人が毎年あるとは限りません。あくまでも企業の都合によるので、企業に就職するのか、動物関係の仕事がしたいのかが重要となります。例として、こどもの時からの夢で、上野動物園の飼育係になりたかったので就職先も上野とした場合を考えてみます。まず、東京動物園協会の試験を受け合格しなければなりません。また合格しても、勤務先は上野、多摩、井之頭、葛西水のいずれかの園となり、必ずしも上野にならない場合もあるのです。
(4)動物園水族館以外の就職先について
本校への入学動機の90%以上は、動物園水族館の飼育員希望です。しかし、実際に就職したのは、40%弱と半数以下でした。「どうしてか?」その理由です。ア.高校生時には、動物関係の仕事は、動物園水族館の職員しか想像できなかったこと。
イ.本校で実際に動物に触れ、先輩の話を聞き、研修先で色々な仕事に触れることで、動物園水族館以外に、酪農から始まり幅広く様々な職場があることを認識、理解すること。
ウ.そこで、自分にマッチングした職場を選択することができること。
エ.その他、家庭の事情、勤務場所、待遇などの条件、就職時期等があること。
1.動物園名
浜松市動物園、秋田市大森山動物園、東京都恩賜上野動物園、江戸川区自然動物園、市川市動物園、横浜市緑の協会、埼玉県こども動物自然公園、キャンペルタウン野鳥の森、東武動物公園、日本平動物園、須坂市動物園、名古屋市東山動物園、海の中道海浜公園動物の森、九十九島動植物園森きらら、岩手サファリパーク、那須どうぶつ王国、富士サファリパーク、群馬サファリパーク、市原ぞうの国、伊豆アニマルキングダム、伊豆シャボテン動物園、富士花鳥園、iZOO、大内山動物園、神戸どうぶつ王国、嵐山モンキーパーク、ネオパークおきなわ、以上27施設41名です。北は「秋田市大森山動物園」で、南は「ネオパークおきなわ」であり、全国に広がっています。一般的に、動物園・水族館に就職できるのは、学業成績が上位の学生です。
この表は、過去5ケ年間で3年間(回)以上就職できた主要施設です。東京動物園協会へは毎年就職しており、勤務場所は上野、多摩などです。また、横浜市は緑の協会が採用先となり、ズーラシア、野ケ山、金沢動物園が勤務地になっています。いずれも学業成績トップグループの学生が合格する割合が非常に高く、かなりの難関です。
次に毎年採用されているのは、群馬サファリパークと富士サファリパークの国内の2大サファリパークで、27期生は群馬に3名、富士には7名と複数名でした。また、埼玉こども、東武動物公園と市原ゾウの国は、この5ケ年で、4年間(回)採用されています。
2.水族館名
鶴岡市加茂水族館、アクアワールド茨城県大洗水族館、鴨川シーワールド、葛西臨海水族園、京急油壺マリンパーク、下田海中水族館、伊勢シーパラダイス、太地町立くじらの博物館、宮島水族館、以上9施設14名です。北は山形県の「加茂水族館」で、南は広島県の「宮島水族館」になり、動物園同様、全国に広がっています。
次に、過去5年間の主要施設の就職状況は次の表の通りです。
この表は、過去5ケ年間で2年(回)間以上就職できた施設で、前記の動物園と比べると、毎年採用の水族館は皆無です。最多は5年間で4回採用の「鴨川シーワールド」と「くじら博物館」の2施設のみ、他は多くて2から3回です。その理由は、動物園と水族館の職員数に比例する場合が多く、もともと水族館職員の募集が少ないためです。
そして付け加えておくことは、女子学生の場合は、学業ももちろんですが「体力」と「華」と「キレ」が必須でかなりの狭き門です。そして、男子学生の場合は、従来は水族館を目指す学生の多くはイルカなどのトレーナーを希望する女子であったのが、最近は増加していることです。
もちろん、トレーナー以外の水族魚類の飼育担当者としても、多数の卒業生が就職し活躍しています。
3.観光牧場等
マザー牧場、成田ゆめ牧場、アロハガーデンたてやま、カワヨグリーン牧場、南が丘牧場、服部牧場、磯沼ミルクファーム、ワールド牧場、阿蘇ミルク牧場、ZOOKISS、どうぶつむら、パソナふるさと、以上12施設22名です。北は、青森県の「カワヨグリーン牧場」で、南は熊本県の「阿蘇ミルク牧場」です。
この表は、過去5ケ年間で2年(回)間以上就職できた施設で、全国で8施設あります。毎年はマザー牧場のみで、4年間(回)は成田ゆめ牧場と南が丘牧場の2ケ所です。
マザーと成田は、地元千葉県の施設であること。そして、学生が幼少時から行き馴染んでいたことや、企業側が本校卒業生を以前から採用し、その実力や活躍状況を把握しているなどの理由が考えられます。
これらの観光牧場では、飼育業務はもちろんのこと、お客様対応いわゆる接客業務も大きなウエイトを占めているためバランスのとれた本校卒業生が採用される理由と思われます。
4.馬酪農畜産
ノーザンファーム、ビッグレッドファーム、キタジョーファーム、八ヶ岳ロングライディング、ウエスタン乗馬クラブ、ウィルスタッド、パロミノポニークラブ、リバーサイドステーブル、久米島馬牧場、(9-11)那須千本松牧場、千葉県みるく農業協同組合、千葉エッグファーム、きうち牧場、みうら、丹後ジャージー牧場 (6-7)以上15施設18名です。内訳をみると、馬関連(競走馬、乗馬)は9施設11名で、牛(酪農、肉牛)や畜産(鶏、豚)関連は6施設7名でした。最近は、施設が観光牧場化したり、乗馬クラブなどはどちらかというとサービス産業的性格を持っており、更に一部は6次産業化するなど多様化が進んでいます。今年は、沖縄本島の更なる南方の久米島の乗馬施設に就職が決まり、ここが卒業生の就職施設の最南になりました。
この表は、過去5ケ年間で、2年(回)間以上就職できた施設です。
馬関連の特徴として考えられるのは、興味を持っている学生の絶対数が少ないこと、求人企業数(29施設82名)が少ないこと、また北海道などの競走馬育成牧場から身近な一般市民対象の乗馬施設まで、都会から地方まで広範囲なことなどです。
一方、酪農畜産関係求人は88施設223名と、動物病院(203施設435名)に次ぐ多数であり、特に昨年度は農協や組合などの各施設から直接本校へ求人の募集説明に来校され、現場では極度に人出不足であることがひしひしと伝わって来ました。それは、TPPをはじめ一次産業の国際化の問題などで、今日の日本の酪農業の抱える問題を痛感するものでした。
ふれあい施設からは次回にします。